夜のように、深い。深い、緑だ。足元が覚束無いような深緑の名前は、森と言う。
森の中を、誰かが歩いている。長い髪をふわりとなびかせて、迷うこと無く歩き続けている。白く細い足首が緑を掻き分けながら、どこまでも、どこまでも歩いていく。
朝のように、透きとおった。そんな泉だ。森という名前の深緑の奥には、とても言葉には表せないほどに美しく透きとおる水がある。
森の中を、誰かが歩いている。迷いの無い足取りで、色の無い水の中へ向かって、どこまでも、どこまでも歩いていく。
歩きながら、何か言っている。知らない声で、ささやいている。耳元で、誰かが喋る。
それは、遠い過去に、置き去りにした―――……。
『―――あなたも……わたしを……否定……するの……?』
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